昨日は人工膵臓の取り組みについて、2型糖尿病について取り上げましたが、今回は1型糖尿病に関してしっかりお伝えしていこうと思います。
昨年9月、イギリスの国民保健サービス(NHS England)は、1型糖尿病の患者さんに対して「人工膵臓(hybrid closed-loop system)」を全国で導入する取り組みを本格的にスタートしました。
NHS England Rolls Out Artificial Pancreas To People With Type 1 Diabetes (DiABETES・UK 2024年3月28日)
昨日も当ブログで解説しましたが、人工膵臓とは、血糖値を常時モニタリングし、その値に応じて自動的にインスリンを注入するシステムです。
具体的には、
•皮膚に装着されたセンサーで血糖値を常に測定
•インスリンポンプが必要な量を自動的に注入
•高血糖(ハイ)や低血糖(ロー)を防ぐ手助けをする
といった機能を備えています。これにより、1型糖尿病の患者さんがインスリン注射を毎回手動で打つ必要がなくなる可能性があります。
対象者
イギリスの国民保健サービス(NHS)では、以下の1型糖尿病の方を中心に人工膵臓の導入を進めています:
•18歳未満の子どもや若者
•妊娠中の1型糖尿病患者
•HbA1c(過去1〜2か月の血糖の平均値)が7.5%以上の成人患者
このように、血糖コントロールが難しい人や、将来の合併症リスクが高い人を優先的に対象としています。そして5年をかけて、すべての1型糖尿病の患者さんをたいしょうにするとしています。
実際の利用者の声
人工膵臓を先行導入された患者さんからは、次のような声が寄せられています:
•「仕事のストレスで血糖値が乱れても、システムが自動で調整してくれる」
•「夜間の低血糖が減り、安心して眠れるようになった」
•「普段の生活でデバイスを意識することがほとんどない」
この技術により、糖尿病との向き合い方が大きく変わり、生活の質(QOL)が向上していることがわかります。
今後の予定と地域格差への配慮
イギリスでは、今後5年間をかけて、できるだけ多くの1型糖尿病患者さんにこのシステムを届ける計画です。特に、
•地域による医療格差を減らすこと
•まだ適切な治療を受けられていない人への優先導入
を重視しているとのことです。
また、イングランドだけでなく、スコットランド・ウェールズ・北アイルランドでも順次導入が進められています。
まとめ・日本でも期待される人工膵臓の普及
人工膵臓は、日本国内でも臨床研究や承認プロセスが進められており、今後の保険適用や一般導入が期待されています。
血糖持続モニタリングとインスリンポンプ自体は広く普及しつつあるのですが、両者の自動連動には多くのアルゴリズム(解析プログラム)が関わるため、技術的な問題や、法的な規制の問題があります。
また、アルゴリズムの発展のためには、多くの糖尿病患者さんのデータが必要ともいえます。
今回取り上げたイギリスでの取り組みなどは日本の1型治療の今後にも左右してくると思います。
当院でも、最新の糖尿病治療に関する情報を引き続き発信しながら、一人ひとりに合った治療の選択肢をご提案していきます。
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令和7年5月14日
茅ヶ崎ファミリークリニック
院長 石井 尚
茅ヶ崎ファミリークリニック(内科・小児科・皮膚科)
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