これまで「膵炎を引き起こすのでは?」と不安視されてきたマンジャロなどのGLP-1受容体作動薬(GLP-1製剤)。
ところが、2025年に発表された新しい研究によって、「実は膵炎のリスクを下げる可能性がある」という驚きの結果が報告されました。
今回の当院ブログはこちらを紹介したいと思います。
Dewi YP ほか:“Association of GLP-1 Receptor Agonists With Recurrent Acute Pancreatitis and Clinical Outcomes: A Multicenter Cohort Study.”
The American Journal of Gastroenterology. 2025年5月号;120(5):654–663.
特に、近年注目されているマンジャロ(一般名:チルゼパチド)などのGLP-1製剤について、医療現場でも安全性の再評価が進んでいます。
GLP-1製剤ってどんな薬?
GLP-1製剤は、もともと2型糖尿病の治療薬として開発されました。
•インスリンの分泌を助ける
•食欲を抑える
•胃の動きをゆっくりにする
といった作用があり、体重減少の効果もあるため、最近では肥満症治療としても使われるようになっています。当院でも多くの患者様にご利用いただいております。
日本で使われている主な製剤には、「マンジャロ」「オゼンピック」「リベルサス」などがあります。
「膵炎になりやすい?」という不安について
過去には、「GLP-1製剤を使うと膵臓に負担がかかって膵炎になるのでは?」という声がありました。
たしかに、薬の使用初期に腹痛や吐き気などの症状が出ることがあり、それが膵炎と誤解されるケースもありました。
しかし、これまでの報告の多くは限られたデータや動物実験によるもので、明確な因果関係ははっきりしていませんでした。
【新しい発見】GLP-1製剤が膵炎リスクを下げる?
2025年にアメリカで発表された大規模な研究では、過去に膵炎を経験した糖尿病や肥満の患者さんを対象に、GLP-1製剤の影響が調べられました。
その結果、
•GLP-1製剤を使っていた人のほうが、膵炎の再発率が低かった
•重症化や死亡のリスクも低下していた
という、これまでとは逆の結果が出たのです。
なぜ膵炎リスクが下がるの?
はっきりした理由はまだ研究中ですが、以下のような可能性が考えられています。
•体重が減ることで、膵臓への負担が軽くなる
•血糖値が安定し、慢性の炎症が起きにくくなる
•GLP-1そのものに抗炎症作用がある可能性
ただし、これはすべての人にあてはまるとは限りません。個々の体調や病歴に応じた判断が大切です。
安全に使える薬なの?
「絶対に安全」とは言い切れませんが、正しく使えば、メリットのほうが大きいといえる時代になってきました。
当院では、マンジャロを含むGLP-1製剤を取り扱っており、使用時の副作用チェックや定期的な血液検査など、安全面に配慮した対応を行っています。
「興味はあるけど不安…」という方も、どうぞお気軽にご相談ください。お一人おひとりに合った説明を丁寧にさせていただきます。
まとめ
GLP-1製剤は、「膵炎を起こしやすい薬」から「膵炎のリスクを減らす可能性がある薬」へと見直されつつあります。
医療の知識は日々アップデートされています。古いイメージにとらわれず、最新の研究に基づいた判断をしていくことが、健康を守る第一歩です。
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予約なしでもみんなが笑顔になる、
茅ヶ崎ファミリークリニックです。
お気軽にどうぞ。
令和7年 6月12日
茅ヶ崎ファミリークリニック
院長 石井 尚
茅ヶ崎ファミリークリニック(内科・小児科・皮膚科)
〒253-0054 神奈川県茅ヶ崎市東海岸南5丁目1−21
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