今回も糖尿病治療薬であり、医療ダイエットの「マンジャロ(一般名:チルゼパチド)」についてご紹介します。これまでのGLP-1受容体作動薬との違いや、期待されている減量以外の効果について詳しくリアルに解説します。
マンジャロはどんな薬?
マンジャロは、2022年以降に登場した新しいタイプの糖尿病治療薬です。従来のGLP-1受容体作動薬とは異なり、「GLP-1」と「GIP」という2種類のホルモンに作用する点が大きな特徴です。
GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)は、インスリンの分泌を促すことで血糖値を下げるホルモンです。これまでの糖尿病治療薬は、このGLP-1の作用を強めることで血糖値をコントロールしてきました。
一方、マンジャロはGLP-1に加えて「GIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)」というホルモンにも働きかけます。GIPもインスリン分泌を促す働きがあり、GLP-1と併せて作用することで、より強力な血糖降下作用と体重減少効果が期待されています。

従来薬との主な違い
マンジャロは、次のような点で従来のGLP-1受容体作動薬より優れているとされています。
血糖値を下げる力が強い
HbA1cの低下幅が大きく、より高い血糖コントロール効果が報告されています。
体重を減らす効果が高い
肥満の治療薬としても注目されており、糖尿病と肥満を同時に治療する選択肢として期待されています。
心血管疾患のリスク低減が期待されている
心臓病や脳卒中など、将来的な合併症のリスクを減らす可能性が研究で示されています。
2024年に発表された研究では、マンジャロを使用した2型糖尿病患者の体重が平均15%以上減少し、血糖コントロールの面でも他の薬剤より優れていたことが報告されました。
さらに、糖尿病や肥満だけでなく、将来的には認知症やがんの予防にも役立つ可能性があるとして、世界的に注目が集まっています。
GLP-1受容体作動薬と認知症予防の可能性
高齢化が進む中で、認知症、とくにアルツハイマー病の予防は大きな社会的課題となっています。最近では、糖尿病の治療薬であるGLP-1受容体作動薬に、認知症を予防する可能性があることが研究で示されてきました。
アルツハイマー病とGLP-1の関係
アルツハイマー病は、脳内にアミロイドβという異常なタンパク質がたまり、神経細胞が傷つくことで発症します。さらに、脳の中の免疫細胞が活性化し、炎症が慢性的に起こることで病気が進行すると考えられています。
GLP-1受容体作動薬は、血糖値を下げるだけでなく、脳の中の炎症を抑え、神経細胞を守る働きがあることがわかってきました。たとえば、「リラグルチド」というGLP-1受容体作動薬には、軽度アルツハイマー病の患者の脳を保護する可能性があると報告されています。
認知症リスクの低下に関する研究
近年の研究では、GLP-1受容体作動薬を使用している糖尿病患者で、アルツハイマー病などの認知症のリスクが下がる可能性があるという報告が出てきています。セマグルチドという薬を使用した研究でも、認知症リスクの低下が観察されています。
これらの結果から、GLP-1受容体作動薬が脳の健康にも良い影響を与える可能性があると考えられています。
マンジャロのさらなる可能性
マンジャロは、GLP-1だけでなくGIPにも作用することから、認知症予防においても従来薬より高い効果が期待されています。GIPには、インスリンを促すだけでなく、神経細胞を保護する働きがあるという研究結果もあります。
ただし、これらの効果はまだ研究段階にあり、今後の臨床試験によって、安全性や実際の効果が確認されていく必要があります。
まとめ
マンジャロは、血糖値を効果的に下げるだけでなく、体重の減少や心血管疾患の予防、さらには認知症の予防にも役立つ可能性がある新しい薬です。今後の研究次第では、糖尿病治療を超えて、健康寿命の延伸にも寄与する薬として、さらに注目されることでしょう。
当院では、糖尿病や生活習慣病に関する最新の治療や予防について、丁寧なご相談を承っております。気になる方は、ぜひ一度ご相談ください。
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令和7年 7月5日
茅ヶ崎ファミリークリニック
院長 石井 尚
茅ヶ崎ファミリークリニック(内科・小児科・皮膚科)
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