茅ヶ崎ファミリークリニック日記

茅ヶ崎てっぽう道の町医者の思うこと。

"口から食べる"を諦めない ― 訪問診療における食支援の役割

こんにちは!

茅ヶ崎市、てっぽう道の茅ヶ崎ファミリークリニック、副院長の酒井です!

 

「最近、食べる量が減ってきて」

「むせることが増えたみたいで、心配で」

 

ご高齢のご家族を介護されている方から、こういったお声をよくいただきます。

食べることは、毎日の何気ない営みです。ですが、年齢を重ねたり、病気を抱えたりすると、この「食べる」が、だんだんと難しくなっていくことがあります。

 

今回は、訪問診療における"食支援"について、分かりやすくお話しします。ご自宅で過ごされている方にとって、「口から食べる」を諦めないことが、どれだけ大切か――そのことをお伝えできればと思います。

 



 

「食べること」は、生きることそのもの

私たちは普段、当たり前のように食べて、飲み込んでいます。

でも、食べるという行為は、実はとても複雑な機能の積み重ねです。

 

• 食べ物を認識し、口へ運ぶ

• 噛んで、飲み込みやすい形にする

• 喉から食道へ、安全に送り込む

 

このどれか一つが弱るだけでも、食事は途端に難しくなります。

 

そして「食べる」は、単に栄養をとるためだけのものではありません。

好きなものを味わう喜び。家族と同じ食卓を囲む時間。季節の食材に触れる楽しみ。

食べることは、その人らしく生きることと、深くつながっているのです。

 

なぜ訪問診療で食支援が大切なのか?

通院が難しくなった方ほど、実は食の問題が見えにくくなります。

クリニックに来ていただければ、診察のなかで体重の変化や食事の様子を確認できます。ですが、ご自宅で過ごされている方の場合、「少しずつ食べられなくなっている」という変化は、ご家族でも気づきにくいものです。

 

気づいたときには、体重が大きく減っていたり、脱水を起こしていたり――ということも少なくありません。

 

訪問診療では、私たちが実際にご自宅へうかがいます。

普段の食事の様子、台所の様子、ご本人の表情。生活の場に身を置くからこそ見えてくるものが、たくさんあります。

 

食支援は、まさにこの"暮らしの中で診る"訪問診療と、とても相性がよい医療なのです。

 

「食べられない」の裏に隠れているもの

「食欲がないだけ」と思われがちですが、その背景にはさまざまな原因が隠れていることがあります。

 

• 嚥下(えんげ=飲み込む力)の低下

• 低栄養や脱水

• お口の中の問題(虫歯・義歯が合わない・口内炎など)

• 薬の副作用による食欲低下

• 便秘や、隠れた感染症

• 気分の落ち込み(うつ)

大切なのは、「年だから仕方ない」で終わらせないことです。

 

原因をていねいに探っていくと、改善できるものが見つかることがよくあります。合わない義歯を直す、薬を見直す、便秘を整える――それだけで、また食べられるようになる方もいらっしゃいます。

決して、諦めないでください。

 

こんなサインに気づいたら

飲み込む力の低下は、少しずつ進みます。次のようなサインがあれば、一度ご相談ください。

 

• 食事中によくむせる

• 食後に声がガラガラになる

• 食べるのに時間がかかるようになった

• 痰(たん)が絡みやすい

• 原因のはっきりしない微熱がくり返す

• 体重が知らないうちに減っている

 

特に注意したいのが、誤嚥(ごえん)です。

食べ物や唾液が、誤って気管に入ってしまうと、誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)を起こすことがあります。ご高齢の方にとって、くり返す肺炎は体力を大きく奪う、油断できないものです。

 

食支援でできること

食支援は、お医者さんだけで行うものではありません。さまざまな専門職がチームになって、その方の「食べたい」を支えます。

 

• 医師による全身の状態・嚥下機能の評価

• 歯科や歯科衛生士による口腔ケア

• 管理栄養士による栄養の評価と食事の工夫

• 言語聴覚士による飲み込みのリハビリ

• 看護師・ケアマネジャー・ご家族による日々の見守り

 

具体的には、食べるときの姿勢を整えたり、食事の形態(とろみをつける、やわらかくするなど)を一人ひとりに合わせて調整したりします。

 

お口の中を清潔に保つことも、とても大切です。お口のケアは、誤嚥性肺炎を防ぐうえで、欠かせない取り組みのひとつなのです。

こうした工夫を重ねることで、「もう食べられない」と思われていた方が、また口から食べる喜びを取り戻せることもあります。

 

"口から食べる"を諦めないという選択

もちろん、ご病気の状態によっては、口から食べることが難しくなる場面もあります。

そのときに何を大切にするかは、ご本人とご家族の想いによって、ひとつではありません。

 

私たちが大事にしているのは、「どうすればその人らしく過ごせるか」を、ご本人・ご家族と一緒に考えることです。

 

たとえ一口でも、好きなものを味わえる。その小さな一口が、ご本人にとっても、見守るご家族にとっても、かけがえのない時間になることがあります。

食支援とは、ただ栄養を入れることではなく、「その人の暮らしと尊厳を支えること」だと、私は考えています。

 

茅ヶ崎ファミリークリニックからのお願い

1. 「年のせい」とあきらめる前に、まず相談を
食べられない、むせる、やせてきた――こうした変化には、改善できる原因が隠れていることがあります。気になったら、早めにご相談ください。

 

2. 通院が難しくても、医療は続けられます
当院では、地域の在宅医療を支える取り組みとして、訪問診療に力を入れています。ご自宅で安心して過ごしていただけるよう、多職種で連携しながら支えてまいります。

 

まとめ

• 食べることは、栄養だけでなく「その人らしく生きること」とつながっている

• 通院困難な方ほど、食の問題は見えにくく、訪問診療と食支援は相性がよい

• 「食べられない」の裏には、改善できる原因が隠れていることがある

• むせ・声のかすれ・体重減少などはサイン。早めの相談を

• 食支援は多職種チームで、その人の「食べたい」と尊厳を支える

 

「口から食べる」を、最後まで諦めない。

そのお手伝いを、地域のかかりつけ医として、ご家族と一緒にさせていただければと思います。気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。

 

0歳から150歳まで、予約なしでもみんなが笑顔になる、茅ヶ崎ファミリークリニックです。お気軽にどうぞ。

 

令和 8年 6月 19日

茅ヶ崎ファミリークリニック

 副院長 酒井 和也

茅ヶ崎ファミリークリニック(内科・小児科・皮膚科)
〒253-0054 神奈川県茅ヶ崎市東海岸南5丁目1−21
https://chiga-fami.clinic/