こんにちは!
茅ヶ崎市、てっぽう道の茅ヶ崎ファミリークリニック、副院長の酒井です!
ご自宅の防災リュックの中身を、最後に確認したのはいつでしょうか。
お水、乾パン、懐中電灯、モバイルバッテリー――このあたりは、多くのご家庭で準備されていると思います。
では、その中に「毎日飲んでいるお薬」は入っていますか。
先日の熊本地震では大きな被害を目の当たりされて明日は我が身と感じた方も多いのではないでしょうか。今回は、地震や災害に備えて、お薬をどう準備しておけばよいのか――日々の診療の中でも実はとても大切なこの話を、分かりやすくお話しします。

災害で本当に困るのは「薬が切れること」です
大きな地震のあと、避難所や仮設の診療所にどんな方が来られるか。実は、けがをされた方だけではありません。
圧倒的に多いのが、「いつもの薬が手元にない」という方なのです。
過去の震災でも、これは繰り返し報告されてきました。
具体的には
• 血圧の薬が飲めず、血圧が大きく上がってしまった
• インスリンが打てず、血糖値が危険な値になった
• 喘息(ぜんそく)の吸入薬を持ち出せず、発作を起こしてしまった
• 血をサラサラにする薬が中断し、脳や心臓の血管が詰まってしまった
• 睡眠薬や抗てんかん薬が急に切れ、体調を崩してしまった
お薬というのは、飲み続けているからこそ効いています。
ですから、種類によっては「急にやめること」そのものが体に負担になるものがあります。特に血圧の薬、ステロイドの内服薬、抗てんかん薬、血液をサラサラにする薬は、自己判断で中断してしまうと危険なことがあります。
災害という、ただでさえ体に負担のかかる状況で、持病の薬まで途切れてしまう。これが一番怖いことだと、私は思っています。
なぜ「1週間分」なのでしょうか
国や自治体の防災の目安でも、お薬はおおむね1週間分の備えが推奨されています。
理由はとてもシンプルです。
• 発災直後の数日間は、道路が通れず、薬が届かない
• 薬局も被災し、シャッターが開かない
• 停電で、処方の記録をパソコンから呼び出せない
• 病院は重症の方の対応で手一杯になる
つまり、「いつもの薬をいつものように受け取れるまで、数日から1週間はかかる」と考えておくのが現実的なのです。
茅ヶ崎は海に近く、津波への備えも欠かせない土地です。避難が長引く可能性も、頭の片隅に置いておいていただきたいと思います。
今日からできる備え、4つ
1. お薬手帳を「持ち出せる形」にしておく
これが、実は一番強力な備えです。お薬手帳があれば、初めての医療機関や避難所の救護班でも、あなたが何を飲んでいるかがすぐに分かります。
おすすめは、スマートフォンで写真を撮っておくこと。手帳そのものを持ち出せなくても、画面を見せるだけで話が通じます。ご家族の分も撮っておくと、なお安心です。
ただし、停電や通信障害でスマホが使えないこともあります。紙のコピーを1枚、防災リュックに入れておく――このアナログな備えが、最後に効いてきます。
2. 予備は「使いながら入れ替える」
食料の備蓄と同じで、お薬も置いたままにすると期限が切れてしまいます。
新しく処方されたお薬を防災リュックに入れ、リュックに入っていた古い方から日常で使っていく。この入れ替え――いわゆるローリングストックの考え方が、無理なく続けられるやり方です。
3. 吸入薬・インスリン・自己注射をお使いの方は、温度と場所に注意
吸入薬は高温になる車内などに放置しないでください。インスリンやGLP-1受容体作動薬などの自己注射は、未開封のものは冷蔵が基本ですが、凍らせてしまうと使えなくなります。
停電時はクーラーボックスと保冷剤が頼りになります。使用中のものは、種類によって一定期間は室温で保管できるものもありますので、ご自身の薬について当院や薬局で確認しておきましょう。
4. 「どこに置くか」を家族で共有する
ご本人だけが場所を知っていても、いざその時に動けないことがあります。玄関か、寝室の枕元か。ご家族全員が分かる場所にまとめておいてください。
「予備の薬をください」と言われたときの、正直なお話
ここは、少し正直にお伝えしておきたいところです。
「災害用に、余分にお薬を出してもらえませんか」――こうしたご相談を受けることがあります。お気持ちはとてもよく分かります。
ですが、備蓄を目的として保険で余分にお薬を処方することは、原則として認められていません。ここは、どの医療機関でも同じルールです。
では、どうすればよいのか。
現実的な方法は、日々の受診と残薬の管理の中で、自然に「1週間分の余裕」をつくっておくことです。
• お薬が完全に切れる直前ではなく、少し余裕をもって受診する
• 手元に残っているお薬(残薬)は、遠慮なく申し出ていただく
• 旅行や仕事の都合、通院間隔について相談する
• 飲み忘れなどで余ったお薬を、捨てずに手帳と一緒にまとめておく
「うまく調整して、少し手元に余裕を持っておきたいのですが」――そう言っていただければ、当院ではご事情に応じて一緒に考えます。
なお、大きな災害の際には、処方箋がなくてもお薬を受け取れる特別な対応がとられることがあります。その場合でも、やはり「何を飲んでいるか」が分かることが前提になります。お薬手帳の大切さは、ここでも変わりません。
茅ヶ崎ファミリークリニックからのお願い
1. お薬手帳を、今日スマホで撮ってください
この記事を読み終えたら、1分で終わります。ご家族の分もどうぞ。
2. お薬が切れる直前の受診は、できれば避けてください
少し余裕をもって来ていただくことが、そのまま災害への備えになります。
3. 通院間隔や残薬のことは、遠慮なくご相談ください
「言いにくいこと」ではありません。一緒に考えるべきことです。
まとめ
お薬の備えは、防災リュックに入れる「一番小さくて、一番大切な荷物」です。
• 災害時に本当に困るのは「いつもの薬が手元にないこと」
• 目安は1週間分。届くまでに数日かかると考える
• お薬手帳の写真とコピーが、最強の備えになる
• 予備は使いながら入れ替える
• 備蓄目的の余分な処方はできないが、受診の仕方で余裕はつくれる
備えというのは、不安をあおるためのものではありません。いざその時に、慌てないためのものです。
茅ヶ崎ファミリークリニックでは、地域のかかりつけ医として、皆さんの「もしも」の備えも一緒に考えます。
少しでも気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。
0歳から150歳まで、予約なしでもみんなが笑顔になる、茅ヶ崎ファミリークリニックです。お気軽にどうぞ。
令和 8年 7月 30日
茅ヶ崎ファミリークリニック
副院長 酒井 和也
茅ヶ崎ファミリークリニック(内科・小児科・皮膚科)
〒253-0054 神奈川県茅ヶ崎市東海岸南5丁目1−21
https://chiga-fami.clinic/