茅ヶ崎ファミリークリニック日記

茅ヶ崎てっぽう道の町医者の思うこと。

シリーズ・喘息⑨ 喘息に関する「はたらく細胞」免疫応答のすべて 茅ヶ崎FC

こんにちは!

茅ヶ崎市、てっぽう道の茅ヶ崎ファミリークリニック、院長の石井です!

 

当院を小児科で受診される患者様の間でも、NHK教育のアニメ「はたらく細胞」がバズっていると言うのでしょうか、大流行りしているようでして、「ヘルパーT細胞・・・インターロイキン・・・」などという、今までお子さんが口にすることのなかった言葉が聞こえてきます。

 

ですので、本日は院長石井の知る範囲での喘息に関係する「はたらく細胞」を紹介していこうと思います。

 

 

 

 

それでは、本日も張り切って、喘息と免疫応答について詳しく解説します。喘息でおきる気道の慢性炎症には免疫応答が深く関与しており、特に昨日もご説明したアレルギー性喘息では登場人物も多くて特異てきな免疫反応が特徴的です。

 

 

喘息患者の方の免疫系は、一般の人よりも過剰に反応しやすい状態にあります。

 

具体的には、気道でアレルゲンや刺激物に対する免疫応答が異常に活発化し、炎症反応や気道の収縮が引き起こされます。この免疫応答には、特にT細胞、B細胞、好酸球、肥満細胞などが重要な役割を果たしています。

 

 

アレルギー性喘息と非アレルギー性喘息の違いについてリアル解説

 

アレルギー性喘息:

  • Th2細胞の過剰活性化:アレルギー性喘息では、主にTヘルパー2細胞(Th2細胞)が関与します。Th2細胞はサイトカインと呼ばれる化学物質(特にIL-4, IL-5, IL-13など)を分泌し、これがB細胞のIgE抗体産生を促進します。
  • IgE抗体と肥満細胞の活性化:IgE抗体は肥満細胞の表面に結合し、アレルゲンと再び接触すると、肥満細胞が脱顆粒を起こしてヒスタミンや他の炎症誘発物質を放出します。これが喘息の急性発作(咳や気道収縮)の主な原因です。
  • 好酸球の浸潤:IL-5は好酸球を動員・活性化するため、気道内で好酸球の浸潤が見られます。好酸球が放出する物質も気道炎症や損傷を引き起こし、喘息症状の悪化につながります。

 

非アレルギー性喘息:

  • アレルギーを原因としない刺激、例えば寒冷空気、運動、化学物質、ウイルス感染などによって引き起こされる喘息です
  • Th2型応答よりも、Th1型やTh17型の免疫応答が関与することが多いです。
  • Th1細胞はインターフェロンガンマ(IFN-γ)を分泌し、マクロファージを活性化します。また、Th17細胞がIL-17を分泌し、これが中性球の動員を促進して炎症を引き起こす場合もあります。

 


喘息の免疫応答の主要な種類についてリアル解説
喘息の発症に関与する免疫応答の主な種類は、以下のように分類されます:

 

Th2細胞優位の免疫応答:

喘息の典型的な免疫応答であり、アレルギー性喘息の特徴です。
IL-4、IL-5、IL-13といったTh2型サイトカインの分泌が、IgE抗体の生成や好酸球の動員に寄与します。Th2細胞優位の応答は、アレルゲンが再度体内に侵入した際に即時型反応を引き起こし、気道収縮や粘液分泌増加をもたらします。

 


Th1細胞およびTh17細胞優位の免疫応答:

主に非アレルギー性喘息で観察される応答です。Th1細胞はウイルスや細菌感染に対する防御を担当しており、IFN-γなどを分泌してマクロファージを活性化します。
Th17細胞はIL-17を分泌し、中性球の動員を助け、より急性の炎症反応を引き起こします。非アレルギー性喘息はアレルギー性喘息とは異なり、好酸球だけでなく中性球も増加する傾向にあります。

 


レギュラトリーT細胞(Treg細胞):

Treg細胞は免疫応答を抑制する役割を担っており、正常な免疫制御機構において重要です。喘息患者では、Treg細胞の機能低下が見られることがあり、これにより過剰なTh2型応答が生じやすくなります。
逆にTreg細胞の活性が十分であれば、アレルギー性反応を抑制し、炎症を制御することが可能です。最近の研究では、Treg細胞に発現するAcsbg1という脂質代謝酵素が喘息病態の収束に関係しているということまでわかってきています。

 

ぜんそくの新たな治療法の鍵となる代謝酵素の発見

https://www.jikei.ac.jp/news/pdf/press_release_20211108.pdf

 


ILC2(自然リンパ球2型):

喘息における新たな炎症細胞として、ILC2細胞の関与も重要視されています。ILC2細胞は、特にウイルス感染や環境刺激に応じてIL-5やIL-13などを分泌し、好酸球の動員を促進します。アレルギー性喘息においては、ILC2細胞が気道のTh2型免疫反応を助長し、慢性炎症状態を維持する原因となることもあります。

 

喘息病態の新理解 (Th2,ILC2,好中球性)

https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/108/6/108_1114/_pdf

 


免疫応答の影響と喘息治療について


今は便利な時代であり、アニメで免疫応答の主要メンバーたちを知ることができます。それに補足して、上のようなさらなるメンバーに興味持っていただけると幸いです。免疫応答の詳細な理解は、喘息治療の進歩に重要な役割を果たしています。例えば、抗IL-5抗体(メポリズマブなど)や抗IL-4/IL-13抗体(デュピルマブなど)は、特定のサイトカインを標的にすることで、好酸球やIgEの産生を抑制し、喘息症状を軽減する新しい治療法です。また、β2アゴニストや吸入ステロイドなどの従来の治療法も、気道収縮の緩和と炎症抑制に効果を発揮します。

 

さらに言えば、喘息の免疫応答は多層的で、遺伝的要因、環境要因、アレルゲンの存在など多くの因子により影響を受けます。個々の患者様の病態に合わせた治療戦略を立てるために、免疫応答の種類や反応機構を理解することは、今後さらに重要になっていくと考えられています。

 

 

それでは本日はこのへんで。0歳から150歳まで、予約なしでもみんなが笑顔になる、茅ヶ崎ファミリークリニックです。お気軽にどうぞ。

 

令和6年10月27日

茅ヶ崎ファミリークリニック

 院長 石井 尚

茅ヶ崎ファミリークリニック(内科・小児科・皮膚科)
〒253-0054 神奈川県茅ヶ崎市東海岸南5丁目1−21
https://chiga-fami.clinic/