今日は昨日に続きまして、「劇症1型糖尿病(げきしょういちがたとうにょうびょう)」という、あまり知られていない、糖尿病の病型についてお話しします。
劇症1型糖尿病ってなに?
糖尿病というと、「甘いものの食べ過ぎ」や「生活習慣」が原因と思われがちですが、劇症1型糖尿病は全く別の病気です。
特にこのタイプは、突然、そして急速に進行するのが特徴で、命に関わることもある非常に危険な病気です。
どんな人がなりやすい?
・若い人に多い(20~40代が中心)
・まったく糖尿病の既往がない人にも発症する
・インフルエンザや風邪の後に発症することがある
ほかに、私自身は診察した経験がありませんが、免疫チェックポイント阻害薬の治療の副作用(irAE)によりおこる劇症1型糖尿病もあるようです。
突然の体調不良として現れるので、予兆がほとんどありません。
どうやって発症するの?
当ブログでは再三取り上げていますが、私たちの体には、血糖値を下げる「インスリン」というホルモンがあります。このインスリンを作っているのが膵臓(すいぞう)のβ細胞です。
劇症1型糖尿病では、何らかの原因(ウイルス感染、自己免疫反応など)で、このβ細胞が急速に破壊され、インスリンがほぼ完全に出なくなります。
たった数日~1週間以内で、血糖コントロールが完全に崩壊してしまうのです。
こんな症状に要注意!
以下の症状が突然出た場合は、すぐに医療機関を受診してください。
•急にのどが渇く、水をたくさん飲む
•トイレが近い
•急激な体重減少(1週間で数kg落ちることも)
•全身のだるさ、眠気、吐き気
•意識がぼんやりする、倒れる
これらは、高血糖と脱水、そしてケトアシドーシス(血液が酸性に傾く危険な状態)による症状です。
どうやって診断されるの?
血液検査で以下のような異常があるかを調べます:
•血糖値が非常に高い(300~800mg/dL以上)
•HbA1cが意外と低い(急激な発症なので)
•ケトン体の上昇
•インスリン分泌のほとんどが消失
•膵臓の炎症マーカーの上昇
これらを総合的に判断して、劇症1型糖尿病と診断されます。
治療について
治療の中心はインスリンの注射です。これは一生涯必要になります。
しかし、正しい治療と生活管理を行えば、健康な人とほぼ同じような生活ができます。
急性期には、入院して点滴や厳密な血糖管理が必要になることもあります。
命を守るためのおねがい
劇症1型糖尿病は、早期に気づくことが何より大切です。
「風邪をひいた後から急に体調が悪い」「糖尿病なんて無縁だと思っていたのに…」という方でも、命に関わることがあります。
少しでも気になる症状があれば、自己判断せず、すぐにご相談ください。当院でも、血糖値やケトン体の簡易検査が可能ですので、お気軽にご相談ください。
0歳から150歳まで、
予約なしでもみんなが笑顔になる、
茅ヶ崎ファミリークリニックです。
お気軽にどうぞ。
令和7年5月17日
茅ヶ崎ファミリークリニック
院長 石井 尚
茅ヶ崎ファミリークリニック(内科・小児科・皮膚科)
〒253-0054 神奈川県茅ヶ崎市東海岸南5丁目1−21
https://chiga-fami.clinic/