映画好きの院長が語る好きな映画ランキング:茅ヶ崎FC
こんにちは。茅ヶ崎市、てっぽう道の茅ヶ崎ファミリークリニック、院長 石井です。
映画おすすめランキング、前回の公開のあと、意外と読んでくださった方から声をかけられる機会がありまして、やはり始めたことは続けないといけないかと思いました。
それでは、今回も骨からの映画好きとして責任を持って90位から81位までおすすめのランキングを公表したいと思います。
90 デッドマン・ウォーキング
若きショーン・ペンが死刑囚の役、スーザン・サランドンが敬虔な修道女の役で涙ながらの死刑執行までの切ない日々を演じます。私自身は死刑制度は肯定派です。それでも、人が人をさばくこと、このことの重大さを非常に感じることができる、民主国家にも残るこの刑罰制度の倫理的・哲学的な重大さを感じることのできる非常に意義深い作品です。社会派作品と言いたくないのは、やはり犯罪者といえど、命をテーマに扱う以上、システマチックに落とし込むことができないやるせなさを感じるからです。法治国家においての法制度はどこまでも冷徹であり厳格であるべきだし、さらには被害者感情も大事であると思います。それでも犯罪者も人間なのです。そんなことを感じつつ、永遠に答えの出ない死刑制度が日本にもあること、こんな事を考えるきっかけになる映画、答えの出ない問いかけを観る者にしっかりとしてくれる映画って素晴らしいと思います。
89 リービング・ラスベガス
この映画、一言で言えばアルコール中毒で死んでいく男と、その男に恋をしてしまった売春婦の悲しい悲しい物語です。さきほどのデッドマン・ウォーキングでの死刑囚を演じたショーン・ペンもそうですが、主演でアルコール中毒役のニコラス・ケイジ、この二人に共通するのは、死にゆく男、その無力な男たちの放つ、とてつもない色気というか美しさがあるのです。ここに女性は惹き寄せられるし、それ自体はとても動物的で、自然なことなのだと思います。でもなんていうのでしょうか、滅びの美学というのでしょうか、いや、これはむしろ逆の表現がふさわしいと思うこともあるくらいです。もしかすると、美しさというのは、滅びゆくものにしか宿らないとも言えるのではないでしょうか。その年のオスカーにノミネートされまくったバリバリのハリウッド映画なのですが、なぜか観ながら三島由紀夫の耽美主義を感じてしまう、切なくも美しいラブストーリーです。はっきり言って、おすすめです。
88 トゥルー・ロマンス
上で触れた切なくも美しいラブストーリー、この言葉に更にふさわしいとも言える作品です。若きタランティーノ監督が脚本家として手掛けた実験的な映画でもあると言えます。マフィアから追われ、極限状態の中で生きる若い二人が織り成す愛と逃避行が描かれています。ビデオショップに働く青年クラレンスは、ある日の誕生日、上司が誕生日プレゼントとして差し向けたコールガールと出会います。互いに一目で恋に落ちた二人はさっそく結婚するのですが、そんな矢先に大量の麻薬を拾ってしまい、マフィアに追われる逃避行となります。吊り橋効果といいましょうか、ハラハラ・ドキドキしながら、若い二人のロマンスのストーリーを同時に見ると、余計に感情移入してしまうというか、より二人に近い視点でラブストーリーを体験できるから不思議です。何度でもいいますが、「映画は表現芸術なのです。」観るものにどれだけ感情移入させることができるのか、そんな単純なことにとことん挑戦した若きタランティーノはやはり天才なんでしょう。
87 ファーゴ
昔むかし、父親に連れられて脚本家のジェームス三木の講演会に行ったことがありました。おそらく小学校4~5年生の頃でしたが、その時のジェームス三木の言葉がその後何十年も僕の心に残ることになります。そのとき、何かのNHK大河ドラマをヒットさせて自信満々、意気揚々としていたジェームス三木が、「人は他人の不幸を常に求めている。航空機事故などがあったときに、人はそのニュースに釘付けになる。エンターテイメントに関わる人間として、この事は常に念頭に入れて作品を造っている。」こんな筋のことを言いました。小学生であった僕は、その言葉に衝撃を受けました。そして、これが本当のことなのか、「人はかくも残酷なのか」、そのことをずっと考えながら思春期を送ってきました。人が誰しも他人の不幸を求めているかどうかは別として、実際にあった事件に怖いもの見たさで多くの人が興味を持つこと、これについてはジェームス三木が正しかったと今は思います。「ファーゴ」は、アメリカ北部の田舎町で起こった恐ろしい連続殺人事件をテーマにしたトゥルー・クライム系の映画です。実際に起ったことだからこその不気味さ、意味のわからなさ、調律の取れない盛り上げ方は映画としてとても実験的であり、非常に面白い作品です。コーエン兄弟の初期の作品と言っても良いでしょうか。コーエン兄弟の作品はどれも好きですが、こちらはとにかくおすすめです。
86 マグノリア
ロサンゼルスを舞台に、一見関係のない男女9人の24時間を描く群像劇です。私自身がこの映画公開当時、ロサンゼルス近郊に住んでいたこともあり、思い入れの深い映画です。この映画はミュージカルではないのでしょうが、ミュージカルと言う演劇的手法自体をオマージュしたような作品です。内容としては、ネタばらしないギリギリの範囲で説明すると、それぞれの人に不幸があり、やるせなさがある毎日のなかで、突然すべてを洗い流すかのごとく、ドラマチックな音楽とともにロサンゼルスの街にはカエルの死体が降り注ぐという、これだけ説明しててもなんのことかわからなくなるような映画です。それでも、トム・クルーズをはじめ役者の演技と、映像美と、音楽の美しさに調律が取れていると、映画として見ごたえのあるものになるので不思議です。ちなみに、このように物語がこんがりガリ、もつれた糸のように解決困難になったあと、絶対的な神のような存在、もしくは超自然現象の出現で一気に物語が収束するという演劇手法は、「デウス・エクス・マキナ」と言い、古くはギリシャ演劇からある手法だそうです。
85 Shall we ダンス?
周防正行監督の作品で、「シコふんじゃった」と「Shall We ダンス?」のどちらの作品が好きか、議論の分かれるところではないでしょうか。僕は昔、アメリカ留学中にホームシックであったとき、日本にいる友だちからこの映画のVHSがなんの説明もなく送られてきたことから、この映画を観ることとなり、それからずっと好きな作品です。俳優の役所広司もこの作品で初めて知りました。全てに新鮮さを失った毎日を送るサラリーマンが社交ダンスに出会い、そこに夢中になっていく日々がコメディタッチで描かれています。こういう何でもないところからの些細な人間ドラマ、日本映画界の周防正行監督たるところであり、小津安二郎監督などにも通じる小さな感情の機微を大事にしている創り手の心意気を感じます。
84 パリ、テキサス
はい、出ました。小津安二郎つながりとも言いましょうか、小津安二郎監督のローアングルショットに魅せられてまずは小津オタクになり、その後に世界的な映画監督になったビムヴェンタース監督の出世作です。小津監督のもとめた人間ドラマ、感情の機微について、日本人とは真逆のアメリカ人それもテキサスのカウボーイ気質の人間に表現させたらどうなるのかという映画です。4年ぶりの再開を果たしたまだ幼いわが子とのストーリーですが、その物語のストーリを追うというよりも、映像としての色や音楽、人の顔に宿る儚い表情、これらを感じるための作品です。最近食べておいしかったベトナムで発売されているカラムーチョのような、小津安二郎がアメリカのロードムービーを撮ったらこんな感じなんだろうなと思わせるような、逆輸入的な映画です。映像としても非常に美しいので、そのてんでも是非一度、大画面で観ていただきたい作品です。
83 ブルーベルベット
デヴィッドリンチ監督の不思議な作品です。一時期WOWOWで非常に流行ったツインピークスに通じる奇妙さ、牧歌的な町並みと官能的な世界の混在、理路整然としたものと意味不明な登場人物やストーリの混在、これらが生み出す不思議なテンポが映画としての表現を完成させている作品です。デヴィッドリンチはどちらも表現できるという意味で、ものすごく真面目で誠実な人間であり、いっぽうでド変態で気味の悪い人間であると思います。一面的で単純な性格では、面白いものは生み出せないのでしょうね。ゴッホとか、ダリとか、天才だけが持つ一種の異常さを現代の映画監督ではデヴィッドリンチほど感じさせる人は他にいないのはないでしょうか。
82 ドニー・ダーコ
難解映画だと思います。これは賛否の分かれる映画でもあります。僕自身もこの映画を理解できているのか自信はないですし、なぜ好きなのか説明もしっかりできないかもしれません。この映画は、僕の一方的な解釈ですが、10代にして統合失調症を患うということの現実を表現した映画ではないかと思います。その意味で、観ているものには非常に理解しがたいストーリーであるし、観終わったときの充足感もなにもないものなのです。でも、これって統合失調症という病気のつらさ、こわさそのものをリアルに表現しているのではないでしょうか。映画というのはわかりやすさがすべてではない、何度も言うように表現芸術であり、統合失調症というなってみないとわからない病気の雰囲気だけでも感じることができ、感情移入が少しでもできれば映画として完成してるのだと思います。ぜひ、この曖昧な非現実の居心地の悪さを感じてみてください。誰かにとっての現実であるならば、それ以上の評価は必要ないと思います。
81 ソナチネ
北野武監督の作品であり、その映像の美しさが際立つ作品です。その独特の色彩表現について、映画好きのあいだで、後に「キタノブルー」という言葉が生まれていますが、その言葉にふさわしい美しい青色が描かれた作品です。青い沖縄の海、青い空、青い熱帯魚。そしてここで重要なのは、青い色の美しさをひときわ際立たせるのが、血の色なのです。バイオレンスと静寂、このバイオレンスには赤が使われ、静寂には青が使われています。
そしてこの映画、名セリフにも溢れています。
ここからはこの映画を好きな人にしか伝わりませんが、映画の時系列で、僕の好きなセリフを上げていきます。
「バカはてめぇじゃねか。」
「村川さん、やめてくださいよ。村川さん、村川さーん。やめてくださいよ。」
「お前な 悪い奴ばっかり知っててよ もっと何かいねぇのかよ? 甲子園出たとか もっとマシな奴よ」
「あんまり死ぬの怖がるとな、死にたくなっちゃうんだよ。はは。」
「車焼いちゃって、どうやって帰んだよ」
はい、完全に誰得(誰が得するんだよこれ)でしたね。ごめんなさいね、映画好きは度が過ぎるとすぐに説明を放棄してしまいます。いいものに説明はいらない、とにかく観てほしいです。これに懲りずに、またいずれ70位台を説明していきたいと思います。
それでは今回はこの辺で。
0歳から150歳まで、予約なしでもみんなが笑顔になる、茅ヶ崎ファミリークリニックをどうぞよろしくお願いいたします。
令和6年7月4日
茅ヶ崎ファミリークリニック
院長 石井 尚
茅ヶ崎ファミリークリニック(内科・小児科・皮膚科)
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